最高裁判所第一小法廷 平成9年(オ)1077号 判決
上告人
法布院
右代表者代表役員
舟橋雄雅
右訴訟代理人弁護士
小長井良浩
同
大澤三郎
同
三島卓郎
同
有賀信勇
同
西村文茂
同
北本修二
同
荘司昊
同
小山千蔭
同
尾崎高司
同
角山正
同
菊池至
同
三宅信幸
同
小川原優之
同
加藤洋一
同
大島真人
同
真田昌行
同
木村和弘
同
大室俊三
被上告人
成田樹道
右訴訟代理人弁護士
宮原守男
同
倉科直文
同
松村光晃
同
松波克英
同
戸田裕三
同
澤健二
同
海野秀樹
主文
原判決を破棄する。
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理由
上告代理人小長井良浩、同大澤三郎、同三島卓郎、同有賀信勇、同西村文茂、同北本修二、同荘司昊、同小山千蔭、同尾崎高司、同角山正、同菊池至、同三宅信幸、同小川原優之、同加藤洋一、同大島真人、同真田昌行、同木村和弘の上告理由第二点について
一 原審の適法に確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
1 法布院は、宗教法人日蓮正宗により建立された寺院であるところ、被上告人は、昭和五八年六月三〇日、日蓮正宗の管長(代表役員)である阿部日顕により法布院の主管に任命されて、その本堂及び庫裏である第一審判決別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」をいう。)の占有を開始した。なお、本件建物は、日蓮正宗の総本山である宗教法人大石寺名義で保存登記がされていた。
2 法布院は、昭和六二年四月七日、法人格を取得して日蓮正宗に包括される宗教法人(上告人)となり、同時に、法布院の主管である被上告人が、代表役員は主管の職にある者をもって充てる旨を定めた上告人の規則七条一項及び日蓮正宗の規則である日蓮正宗宗制四三条一項に基づき、上告人の代表役員となった。上告人の規則七条二項は、代表役員以外に置くべきものとされる三名の責任役員(以下、代表役員でない責任役員を、単に「責任役員」という。)は上告人に所属する壇徒又は信徒のうちから上告人の代表役員が選定する旨を、同条三項は、右選定については日蓮正宗の代表役員の承認を受けなければならない旨を、それぞれ定めており、日蓮正宗宗制四三条二項は、上告人の規則七条三項と同旨の定めをしている。なお、上告人の設立に伴い、本件建物の所有権は上告人に帰属した。
3 上告人の信徒は、ほとんどが創価学会の会員であり、責任役員もまた、すべて右会員の中から選任されていたが、平成二年一二月、日蓮正宗と創価学会との間に対立が生じ、日蓮正宗は、平成三年ころ、その包括する宗教法人に対し、日蓮正宗からの離脱防止を狙いとして、創価学会の会員以外の者から責任役員を選定するよう指導した。
4 被上告人は、3記載の日蓮正宗の指導に従い、平成四年四月二九日付けで、上告人の信徒のうちから創価学会の会員ではない佐崎昭二郎ら三名を責任役員に選定し、日蓮正宗の代表役員である阿部の承認を受けた。
5 その後、被上告人は、その宗教的信念を貫くためには上告人と日蓮正宗との被包括関係を廃止することもやむを得ないと考えるに至った。上告人の規則では、規則の変更については責任役員の全員の議決が必要であると定められていたところ、被上告人は、日蓮正宗との被包括関係の廃止に係る規則変更につき佐崎らの同意を得ることはできないと考え、責任役員を右のような規則変更に賛同する者と入れ替えるため、平成四年一一月九日、阿部の承認を受けることなく、佐崎らを責任役員から解任し(以下、これを、「本件解任行為」という。)、創価学会の会員である金田保ら三名を後任の責任役員に選定した。そして、同日、被上告人及び新責任役員により開かれた責任役員会において、日蓮正宗と被包括関係の廃止に係る規則変更について議決がされ、日蓮正宗に対してその旨の通知がされた。その後の平成五年一月二五日、被上告人は、右規則変更について、所轄庁である愛知県知事に対し、認証の申請をした。
6 日蓮正宗の総監である藤本日潤は、平成五年四月一〇日、上告人の主管である被上告人に対し、事実の確認を行った上で、日蓮正宗の代表役員の承認を受けることなくされた本件解任行為は無効であるから速やかに撤回するよう是正措置を採るべきことを指示するとともに、同月一一日、同趣旨の訓戒を行った。しかし、被上告人が右訓戒に従わなかったため、阿部は、宗制等に違反し訓戒を受けても改めない者は罷免等に処する旨を定めた日蓮正宗宗規二四七条九号に基づき、平成五年四月二二日、被上告人を上告人の主管から罷免した(以下、これを「本件罷免処分」という。)。
二 本件は、上告人が、本件建物を占有する被上告人に対し、所有権に基づき明渡しを求める事案である。
原審は、次のように判示し、本件罷免処分は無効であり、被上告人は引き続き上告人の代表役員の地位にあるから本件建物を占有する権限を有するとして、上告人の請求を棄却した。
1 上告人の規則及び日蓮正宗宗制には、上告人の責任役員をその任期中に解任することに関する規定が存在しないが、一般に法人の役員につき任命権を有する者は別段の定めのない限り解任権をも有すると考えられることなどを考慮すると、上告人の責任役員の任命に関する前記の各規定の類推適用により、上告人の代表役員は日蓮正宗の代表役員の承認を受けて責任役員をその任期中に解任することができると解するのが相当である。被上告人は、本件解任行為について阿部の承認を受けていないから、被上告人は宗制に違反したというべきである。そして、被上告人は、右違反について訓戒を受けながら、これに従わなかったのであって、被上告人には日蓮正宗宗規二四七条九号所定の懲戒事由が存在すると認められる。
2 しかしながら、日蓮正宗がかねてよりその包括する宗教法人における被包括関係の廃止の動きを警戒しその防止に動いていたことからすると、本件罷免処分は、日蓮正宗と上告人との被包括関係の廃止を防ぐことを目的としてされたものと認めるのが相当である。また、前記の事実関係によると、仮に被上告人が本件解任行為につき阿部に承認を求めたとしても被包括関係の廃止を防ぐ見地からこれが与えられることはなかったであろうと容易に推測できる上、本件解任行為につき被上告人に対してされた訓戒の目的も被包括関係の廃止を防ぐことにあったのであるから、被上告人が右訓戒に従わなかったことなどを理由とする不利益の取扱いを認めるときは、結局、被包括関係の廃止を企てたことを理由とする不利益の取扱いを禁止した宗教法人法七八条一項の趣旨を潜脱する処分を許容することとなり、法的正義の観念に照らし、これを容認できるものではない。したがって、本件罷免処分は、同条一項に違反し、同条二項により無効というべきである。
三 しかしながら、原審の判断のうち右2記載の部分は、これを是認することができない。その理由は、次のとおりである。
宗教法人法七八条一項は、他の宗教法人を包括する宗教団体(以下「包括宗教団体」という。)は、その包括する宗教法人(以下「被包括宗教法人」という。)と当該包括宗教団体との「被包括関係の廃止を防ぐことを目的として、又はこれを企てたことを理由として」、被包括宗教法人の代表役員等に対し、解任等の不利益の取扱いをしてはならない旨を定め、同条二項は、同条一項の規定に違反してされた行為は無効とすると定めている。右各規定の趣旨は、被包括宗教法人の代表役員等が被包括関係を廃止すべく所定の手続に従って各種の行為をしている場合に、右の者を解任するなどの権限を有する包括宗教団体が、その権限を利用し、右手続の進行に干渉することを禁止するものと解される。
包括宗教団体及び被包括宗教法人の各規則により、被包括関係の内容の一つとして、被包括宗教法人の責任役員の選任等につき包括宗教団体の代表者の承認を受けるべきものとすることは、妨げられるものではなく(宗教法人法一二条一項五号、一二号)、また、このような場合に、包括宗教団体の代表者がその権限を行使するに当たり、いかなる信仰上の考え等を有する者をもって被包括宗教法人の責任役員にふさわしいものとするかは、当該規則等に特別の定めがあるときなどを除き、包括宗教団体の自治的な決定にゆだねられていると解するのが相当である。そうすると、包括宗教団体の代表者が被包括関係を維持することを相当と考え、右権限を行使したために、結果的に、被包括宗教法人において所定の手続に従い被包括関係を廃止することが困難となったとしても、このことから、被包括関係の廃止を望んだ被包括宗教法人の代表役員がその責任役員の解任に必要な承認を受けずにこれを解任すること等が許されると解すべき根拠は、見いだし難い。本件においては、被包括宗教法人の代表役員が責任役員を所定の承認を受けることなく解任しその是正に応じなかったということを懲戒事由として本件罷免処分がされたのであって、同処分に違法はなかったものというべきである。そして、本件罷免処分の際に、日蓮正宗が、被包括関係は維持されるのが望ましいと考え、同処分に伴って被包括関係の廃止の実現に支障が生ずるであろうことを予見していたとしても、そのことをもって、同処分が、宗教法人法七八条一項にいう「被包括関係の廃止を防ぐことを目的として」された不利益の取扱いに当たるということはできず、また、これが被包括関係の廃止を「企てたことを理由として」される不利益の取扱いを禁止する同項の規定を潜脱するものに当たるということもできない。
右のとおり、本件罷免処分を無効とした原審の前記判断には、宗教法人法七八条一、二項の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件の事実関係の下においては、本件罷免処分は、宗教法人法七八条一項の規定に違反するものとは解し難く、同条二項によってこれを無効とすることはできないのであって、被上告人は、同処分により上告人の主管の職を失い、これに伴って上告人の代表役員としての地位を喪失したのであるから、本件建物に対する被上告人の占有権原は消滅したものというべきである。上告人の本件請求は理由があり、これを認容した第一審判決の結論は正当であって、同判決に対する被上告人の控訴は、これを棄却すべきである。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官遠藤光男 裁判官井嶋一友 裁判官藤井正雄 裁判官大出峻郎 裁判官町田顯)
上告代理人小長井良浩、同大澤三郎、同三島卓郎、同有賀信勇、同西村文茂、同北本修二、同荘司昊、同小山千蔭、同尾崎高司、同角山正、同菊池至、同三宅信幸、同小川原優之、同加藤洋一、同大島真人、同真田昌行、同木村和弘の上告理由
<省略>
第二点 原判決には、宗教法人法七八条の解釈適用について明らかな理由齟齬及び誤りがある
一 判例の宗教法人法二六条一項後段及び同七八条の解釈適用
1 松厳寺最高裁判所昭和四一年三月三一日判決
最高裁判所は、松厳寺事件(最判昭四一・三・三一訟務月報一二―五―六六九)において、被包括関係を廃止する寺院規則の変更を届け出た後間もなく、包括法人が住職を住職任免規程所定の事由が存するとして行った住職罷免処分を有効としている。
右判例の立場によれば、包括宗教団体の被包括宗教法人に対する統制権、及び統制による正当な利益は、当然に保護され、宗教法人法(以下、単に「法」という)二六条一項及び同七八条は、被包括宗教法人と包括宗教団体との間を調整する規定として、これを厳格に解すべく、みだりに拡張解釈ないし類推適用することは許されない。
もとより、被包括宗教法人における違法な行為が、これら各規程により、免責・保護されるものでないことは明らかである。
2 大経寺事件東京高等裁判所平成七年一二月一四日判決
イ 本件の同種事案である右事件において、文部大臣は、右法理を次のように敷衍している(傍線、上告人代理人ら)。
「信教の自由、宗教活動の自由を保障する憲法の規定は、個人の信仰生活や宗教団体の……利益を無視すべきでないことはいうまでもない。
しかしながら、このことは、『離脱の自由』のみを重視して控訴人らの主張するように宗教法人法二六条一項後段及び同法七八条を解釈すべきであることを意味しない。被包括関係の廃止においては、包括宗教団体の統制の利益が控訴人らのいう『離脱の自由」と鋭く対立するのであり、しかも、包括宗教団体の統制の利益もまた包括宗教団体の宗教活動の自由に関係する。また、被包括関係の廃止は宗教法人の組織運営の根幹にかかわるものであるところ、宗教法人法は、宗教団体の財産の所有と業務及び事業の運営に資するため宗教団体に法律上の能力を与えることを目的としたものである(同法一条一項)ことに照らすと、取引社会の利益をも考慮する必要があることは明らかである。
そして、これらの対立する諸利益は、いずれも絶対無制限の価値を有するものではないから、その調整は、合理的な立法上の裁量に委ねられていると見るべきである」(甲二九・東京高裁平成七年一〇月二六日付被控訴人〔文部大臣〕準備書面(二)5―6頁)
「これを前提とすると、宗教法人法二六条一項後段及び同法七八条は被包括宗教法人が正当な理由により被包括関係を廃止しようとしても、包括宗教法人の承認が得られないなどのために被包括関係を解消できない場合、それが不合理であり、公序に反すると考えられることから、合理的な例外を定めるとともに、被包括関係の廃止の手続を追行する役員等を保護することで手続の安定を図ったものと位置づけられるべきと考えられる」(同8―9頁)
「しかし、宗教法人法は、他方で、被包括関係の廃止を規則の変更手続によって行うようにするとともに、被包括宗教法人が被包括関係を廃止する旨を包括宗教団体に対し通知し(同条三項)、また、包括宗教団体は被包括関係の廃止の手続が同条一項から三項に違反する旨の通知ができるものとして(同条四項)、法及び宗教法人の規則の定める手続に従うことで被包括関係の廃止の正当性を担保したものと解される。」(同9―10頁)
「被包括関係の廃止に反対する責任役員がいるからといって、控訴人の主張のとおり宗教法人法二六条一項後段及び同法七八条を類推適用して責任役員の選解任に包括宗教法人の承認を要する旨の規定の適用がないとすることは不当であるし、……反対する責任役員を説得できないなら、被包括関係の廃止が正当といえるか疑問が残るのである」(同11―12頁)
すなわち、被包括宗教法人が、包括関係の設定により、包括宗教団体の統制に服するのは当然である。
これは、包括被包括関係の設定による包括宗教団体の信教上の利害としての被包括宗教法人に対する統制権、及び統制による正当な利益を認め、これを当然に保護すべきであり、被包括関係の廃止も、本来国家による干渉になじまず、宗教団体相互間の自治に委ねられるべきであるところ、法二六条一項後段及び同七八条は、利害の調整のために、例外的に、適法な被包括関係廃止を保護するものであるとしたのである。
ロ そして、右事件において、東京高等裁判所は、以下のとおり判示した(甲二二・東京高判)。
「右各規定は、それぞれの信教の自由が衝突し信教上の利害が鋭く対立する被包括宗教法人と包括宗教団体との間を調整する規定として、これを厳格に解すべく、みだりに拡張解釈ないし類推解釈することは許されないものというべきである。」(六丁裏)
すなわち、右判決は、包括宗教団体の信教の自由、宗教上の利害(被包括宗教法人に対する統制権を含む)を認め、法二六条及び同七八条は、「それぞれの信教の自由が衝突し信教上の利害が鋭く対立する被包括宗教法人と包括宗教団体との間を調整する規程として、これを厳格に解すべく、みだりに拡張解釈ないし類推解釈することは許されない」ということを明らかにしたものである。
二 原判決理由前段の説示による原判決の争点2(本件解任行為の正当性)における宗教法人法二六条一項後段及び同七八条の解釈適用に関する被上告人(控訴人)成田樹道の行為の違反判断
1 原判決は、右争点2(本件解任行為の正当性)(44―51頁)の判断において、正当にも、法二六条一項後段及び同七八条は、包括法人と被包括法人との信教の自由ないし宗教上の利害を調整する規定であるから、厳格に解釈し、みだりに拡張解釈ないし類推適用すべきでなく、本件解任行為は、寺院規則上違法であるとして、次のとおり判示した。
「被包括法人が包括法人との間の被包括関係を廃止しようとするときは、被包括関係の廃止を望まない包括法人との間に、信仰の在り方についての意見を異にし、また、布教その他の宗教上の利害が相反することも起こり得るところであって、宗教法人法は、被包括関係の廃止が、右のように憲法二〇条の保障する信教の自由に深くかかわることから、被包括関係廃止の場合に起こり得る双方の信教の自由ないし宗教上の利害を調整するために、法二六条一項後段及び法七八条の規定を置き、一定の場合につき、被包括法人の被包括関係の廃止を保護しているところである」(45―46頁)
「被包括関係の廃止は、宗教的性質事項(控訴人の表現を借りれば、『聖』の領域)に属し、本来国家による干渉になじまず、宗教団体相互間の自治に委ねられるべき事項である。したがって、右各規定は、それぞれの信教の自由が衝突し信教上の利害が鋭く対立する被包括法人と包括宗教団体との間を調整する規定として、これを厳格に解釈すべく、みだりに拡張解釈ないし類推適用することは許されないというべきである」(47頁)
「被控訴人の法的意思形成には、被控訴人責任役員会の議決が必要であり、現行法規上は、それ以外の方法で、被控訴人の意思形成を行うことはできないのであるから、……責任役員会で議論するなり、反対派の責任役員の説得に努めることにより自己の意見を責任役員会に反映させ、もって、控訴人主張の内容の意思形成に努めるべきであった」(49頁)
すなわち、原判決は、右争点2(本件解任行為の正当性)の判断においては、法二六条一項後段及び同七八条の各規定につき、それぞれの信教の自由が衝突し、信教上の利害が鋭く対立する被包括法人と包括宗教団体との間を調整する規定として、これを厳格に解釈すべく、みだりに拡張解釈ないし類推適用することは許されない旨明言した。
2 原判決は、右解釈上の大原則に基づき、「控訴人主張に係る特段の事由」(44頁)を挙げて、次のとおり判示し、ことごとく控訴人の主張を排斥した。
「被控訴人の圧倒的多数の信徒が被包括関係の廃止を望み、控訴人の責任役員解任の動機が被包括関係廃止を進めることにあったとしても、このような事情や動機は、責任役員の解任に日蓮正宗代表役員の承認が必要である旨定めた被控訴人規則の適用ないし類推適用を排除する理由にはならない」(48頁)
「反対派を解任して責任役員から排斥する行為につき日蓮正宗代表役員の承認を要するとしたことが、ただちに、法二六条一項後段及び法七八条の規定の趣旨に反するとまでは、到底解することができない」(50頁)
「控訴人は、被控訴人の圧倒的多数の信徒がその宗教的信念から被包括関係の廃止を望んでいることにつき証拠調べが必要である旨主張するが、……控訴人主張によっても『聖』なる領域に属する信徒各人の内心の信仰の問題に立ち入って、裁判所が事実調べを行うことは、相当ではない」(50頁)
三 原判決理由後段の説示による被上告人(控訴人)成田樹道の違法行為の法七八条による救済判断
1 ところが、原判決は、争点3(本件罷免処分の効力)の判断において、にわかに本件罷免処分が法七八条に違反し、無効であるとした。
「控訴人において本件解任行為について承認を求めたとしても、日蓮正宗代表役員は、被包括関係の廃止を防止する見地からこれに承認を与えることはなかったであろうことは容易に推測できる上、本件撤回命令の目的も結局は被包括関係の廃止を防ぐことにあったと認められるから、控訴人が本件撤回命令に従わなかったことなどを理由とする被控訴人による不利益取扱を容認するときは、結局、被包括関係廃止を理由とする不利益取扱等を禁止する法七八条の趣旨を潜脱する処分を許容することになり、法的正義の観念に照らして容認できるものではない。」(56―57頁)
2 原判決は、法七八条の驚くべき拡張解釈により、右判断の前提として、次のとおり、前記二、2(本書18―19頁)の挙示の事項についての解釈と全く矛盾する判断を示した。
「被控訴人(上告人)の信徒中の多数を占める創価学会員の希望に答えるためには、日蓮正宗との被包括関係廃止(宗派離脱)もやむなしと考え、日蓮正宗との間の被包括関係の廃止を動機ないし目的として、責任役員会における被包括関係の廃止を含む本件規則変更決議に反対することが予想される責任役員を、賛同する者に入れ替えるため、平成四年一一月九日、本件解任行為を行った」(54―55頁)
「控訴人(被上告人)において本件解任行為について承認を求めたとしても、日蓮正宗代表役員は、被包括関係の廃止を防止する見地からこれに承認を与えることはなかったであろうことは容易に推測できる」(56頁)
3 要するに、原判決は、本件解任行為の正当性の判断においては、法七八条は厳格に解釈すべきであって、みだりに拡張解釈ないし類推適用をすべきでないとして、被上告人の本件総代解任行為は違法であるとしながら、本件罷免処分の効力においては、違法な解任行為に対する撤回命令に従わなかったことを理由とする本件罷免処分を容認するときは、法七八条の趣旨を潜脱する処分を許容することになるというのである。
しかし、原判決の争点2(本件解任行為の正当性)(44―51頁)においては、法二六条一項後段及び同七八条について、「これを厳格に解釈すべく、みだりに拡張解釈ないし類推適用することは許されない」として、本件総代解任行為が違法であると判断しているのであるから、その違法をただすために行なった本件撤回命令とその後の本件罷免処分について、争点3(本件罷免処分の効力)(51―57頁)における法七八条の趣旨を潜脱するもので違法であるという結論を導き出すことは、到底でき得ないものである。
<省略>